顔面神経麻痺の鍼治療について

当院の顔面神経麻痺の鍼治療

当院では顔面神経麻痺の治療は鍼・お灸を用いて行います。 症状の度合いにもよりますが、1～2回の治療で麻痺の見た目は変わらないが患者自身の感覚で変化を感じることが多いです。分かりやすい例では、3回目以降に動かすことが出来なかった所に動きが出てくる、5回目以降に家族や友人、周りの人から「笑顔ができるようになってきている」とか「治ってきてるね」などの声をかけられることが増える、10回目以降は本人が感じる日常の細かなことが改善していく、というような流れがイメージしやすいかと思います。

顔面神経麻痺に限らず麻痺というものは発症から初回の治療までの期間が短いほど早く効果が表れやすいです。現在では脳梗塞後遺症による麻痺は手術の翌日からリハビリ（治療）が始められるほど、発症から時間が経過するほど回復が悪くなるとされています。

鍼灸治療としては、麻痺を起こしている筋肉に対して直接鍼で刺激し、鍼に電気を流し筋肉の収縮をおこさせ、麻痺で硬くなってしまった筋肉に温熱療法を行い血流やリンパの流れを改善させ、オイルマッサージを行うことにより血流やリンパの流れをさらに促進し、筋肉の麻痺を改善していくという流れになります。

具体的な治療の進め方

顔面神経麻痺には中枢性と末梢性があり、中枢性は脳梗塞や脳出血、脳腫瘍など脳の疾患の際に付随してでてくるもので、見た目の変化が少ないのが特徴です。この場合は、鍼灸で治療できる対象ではありませんので、脳神経外科、脳外科等への受診をおすすめします。

それに対して、末梢性は瞼を閉じることができず開いたままの状態や、水分を口に含んだときに口の横からこぼれ落ち口がうまく閉じれないなど、外見が大きく変化してしまう症状が多く、こちらの症状の場合は鍼灸治療で改善を目指します。 まずは顔面神経麻痺の発症前の身体状態や精神状態を問診させていただきます。

顔面神経麻痺の治療はほとんどが患部（顔面部）への施術になります。顔に鍼をするの？と不安になる方も多いですが、「美顔はり」というものを聞いたことはないでしょうか。顔に鍼をしてむくみを軽減させたり、皮膚の張りを回復させてしわを軽減する効果があるという「美顔はり」です。顔面神経麻痺の鍼はこの美顔はりとほとんど同様の施術を行います。 違いがあるとすれば鍼を刺す深さです。美顔はりは皮下組織まで刺すことが多いですが、顔面神経麻痺の場合は麻痺をしている筋肉の表面まで刺します。深さにして数ミリの違いです。また顔面神経麻痺の場合は麻痺側に多くの刺激を与えて効果を高めるため症状の出ている側への施術が多くなります。

また、刺した鍼に低周波の電気を流し麻痺した筋肉の収縮運動を人為的に起こさせることによりそれぞれの筋肉が運動機能を取り戻す手助けをしたり、顔への温熱療法とオイルマッサージで麻痺筋への血流促進し筋肉の硬さを解消させ、筋肉の動きを回復させるようにしています。

患者様の具体的なケース

ケース1
・40代男性、2か月前に発症し病院へ通院していたが変化がなく知り合いから紹介されて来院
・右側の麻痺が強く水分を飲もうとすると口角から水分がこぼれてしまう
・発症から2か月経過していることもあり顔の表情を作る筋肉がかなり硬化していた
・硬化した状態を改善させるために患部の温熱療法を中心に血流の促進を行う
・患部に温熱療法を行う事で血色がよくなって麻痺した筋肉にも少し緩みが出てきた
・患部に鍼で刺激を与える、一番つらいのが水分がこぼれてしまうことだったので口の周りを中心に頬や顎に鍼を刺す
・また、顔だけではなく頭皮や首、肩まで強いコリがあったので鍼、マッサージでコリを軽減
・来院半月ぐらいより顔に刺した鍼に低周波の電気を流し筋肉に収縮運動が起きるように施術量を増やしていく
・約1か月間は外見上は変化少ないが患者からは「少し改善していく感じがする」と言っていただき継続して治療を行う
・継続して治療をしていく中で外見上にも改善がみられるようになり家族より「表情が戻ってきてる」と言われる回数が増えてきた
・約3か月の治療で水分がこぼれることはなくなり、日常生活面でも困ることがなくなったと言うことで治療終了

鍼灸で顔面麻痺がなおるのか？

顔面神経麻痺は鍼灸で治療可能です。顔面神経麻痺は顔面の主に表情を作るための筋肉の麻痺です。筋肉の麻痺はその筋肉への刺激が大事になってきます。 例をあげると脳梗塞後遺症での手足の麻痺の場合、麻痺した筋肉へのマッサージや運動療法を行う事により運動機能を回復させていきます。顔面神経麻痺もそれと同様で、筋肉へ刺激し改善させます。

なぜ鍼灸治療なのかというと、鍼という道具はその麻痺した筋肉へ直接刺激を与えることが出来る道具です。マッサージは皮膚の上から行うので筋肉に刺激を送ることはできますが、筋肉を直接触れる訳ではありません。鍼は刺して入れていくことにより直接筋肉へ刺激を与えることができ、施術の効果をストレートに筋肉に伝えることができます。

過去の治療で鍼での施術が怖いという理由でマッサージ中心の施術になっていた方が、何回目かの治療中に「早く治すためには鍼が良いのか？」と聞いてきたので理由を再度説明し鍼治療も加えるようにしました。初めての鍼治療後に「何か今までと違う感じがする」「最初から鍼治療を怖がらず受けたら良かった」と話して頂き、それからの改善へのスピードは格段に良くなりました。

回復までにどのくらいかかる？

まずは2か月を目安にしてください。過去には1か月ほどの治療で改善した例もありますが、平均すると2か月という感じになります。発症から初回の治療までの期間であったり、発症する前の体の疲労度やストレスなどが大きく関わってきますので個人差はあります。 ただ、初回施術後に患者様の方から感覚的に改善しそうということを言ってくれる事が多いです。

来院しての治療だけではなく、自宅でできるリハビリ方法やその他体質に合わせた養生法をお伝えしておりますので、それらを行ってもらうことにより、改善までの期間を短縮されることが多いです。

こんな話があった

顔面神経麻痺を発症された方のほとんどが先ずは神経外科や整形外科、内科などの病院へ通院されます。病院では顔へのアプローチはほとんどなく点滴での処置になるようです。 また、過去に治療させて頂いた方々の話ですが病院では「治らない」や「治るまでに２年以上かかる」ということを聞いて絶望的な気分になったという話もありました。 また、調べたり、他の人から聞いたりして「一度、鍼灸治療を受けてみたい」と話すと「悪化するから止めておいた方が良い」と言われた方もいました。

そのような方々も当院で治療を続け、改善していくと「もっと早く鍼灸治療をしたらよかった」と笑顔で話してくれます。

温熱療法が顔面神経麻痺に効果がある話

当院は状況によって温熱療法という治療法を用いることもあります。顔面神経麻痺にかかわらず麻痺を起こしてしまった筋肉は日数がたつほど硬くなり更に麻痺が強くなってしまう傾向があります。 硬くなってしまった筋肉に温熱療法を行う事により、血流が促進され筋肉の硬さが緩和されます。

特に当院の温熱療法は角閃石を使用することで効果を高めています。 角閃石という鉱物は科学的に遠赤外線を出すことが確認されており、皮膚表面だけでなく身体内部にまで熱が届きやすくなります。 顔面神経麻痺の筋肉は、本当に硬い状態であるので、深部に熱を届かせ筋肉を緩和させるのに効果的です。 また、角閃石は漢方の世界では陽起石という名称で呼ばれており、冷えたり血流が悪い状態によって起きてしまう症状に効果があるとされています。